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大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)1268号 判決 1978年9月26日

豊中市庄内幸町三丁目一五番一二号

控訴人 小西覚一

豊中市中桜塚三丁目一番一号

被控訴人 豊中市

右代表者市長 下村輝雄

右訴訟代理人弁護士 阿部幸作

右当事者間の損害賠償請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し二〇〇万円及びこれに対する昭和四八年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人代理人は主文同旨の判決を求めた。

二  控訴人は、請求の原因として次のとおり述べた。

1  被控訴人(以下市ともいう。)は水道法にいう水道事業者であり、控訴人は豊中市内に原判決添付の別紙一物件目録記載の建物(増築部分を除く。)を所有している。

2  控訴人は、右建物の増築工事をするため、大阪府知事から都市計画法五三条一項の許可(条件付)を受けたうえ、昭和四八年三月二八日ごろ市の建築主事に建築確認申請をした。控訴人はこれより先同年二月四日藤野工務店こと藤野忠義に右増築工事を請負わせ、同工務店は同月一〇日に着工したところ、同年四月六日市の建築主事から右増築が建築基準法に抵触する旨の通知を受けた。しかし、法違反の程度は僅少であるし、その是正をするには増築部分を事実上取毀すことになり、折からの建築資材の値上りのため予算に支障を招き、結局増築は不可能となるので、控訴人は市の建築部職員奥野善雄、同山岡一博に後日の機会に違反部分を是正する旨申入れ、同年五月二〇日給水装置工事を除き藤野工務店に増築工事を完成させ、その引渡を受けた。

3  右増築部分(以下本件建物という。)の床面積は原判決添付の別紙一物件目録記載のとおりであり、建築基準法にいう建ぺい率に違反しているが、一階において七・三六平方メートル、二階において七・一六平方メートルの範囲で許容面積を上回っているにすぎない。

4  控訴人は、同年五月一〇日ごろ株式会社田上水道工業所(以下訴外会社という。)に対し本件建物の給水装置工事の申込及び同工事施行一切を依頼し、同会社代表者田上広美知(以下田上という。)は同月一二日控訴人のために市水道局に対し右申込をした。ところが、市水道局長は既に市建築部長名の同年四月九日付文書で控訴人に対し給水制限するよう通知を受けており、同局職員西口常夫は前記奥野、山岡とも相談のうえ、右通知を受けて本件建物は建築基準法に違反する無確認建築物であるとし、市建築部制定の違反建築に対する給水制限実施要綱(原判決添付の別紙二参照。以下実施要綱という。)を理由として右申込の受理を拒絶した。控訴人はその後も市水道局に再三給水装置工事を申込んでいたが、その都度受理を拒絶され、昭和四九年一二月九日ようやく受理され、同五〇年一二月四日給水装置工事が完了したが、結局そのときまで市によって給水を停止された。

5  控訴人は市によって給水装置工事申込の受理を拒絶されたので、やむなく同四八年六月暫定的に隣の居住者寺川千津子の専用配水管を分割してもらい、私設水道設備により本件建物に給水を受けることにして、園木忠男に本件建物を賃貸し、同人は同月九日から二階に家族と居住し、一階をクリーニング取次店舗として使用し現在に至っている。

6  水道法にいう水道事業者は需用者から給水契約の申込があるとき、正当の理由がなければ、申込を拒んではならない(同法一五条一項)のに、前記のように市の職員西口、奥野、山岡は右規定に違反し控訴人の給水装置工事の申込を受理せず、一年半以上の間給水を停止して、故意に控訴人の市から給水を受けるべき権利を侵害したものである。

市が制定した実施要綱のうち、「工事中止命令等が出されたものは、建築部から解除の連絡があるまで給水工事を延期する。」との部分は、給水しないことは生命に影響を及ぼし生存権的保障を侵奪するから、憲法二五条一項に違反し無効である。西口らが行政指導の名目で実施要綱に基づいて控訴人に対して給水装置工事申込の受理拒絶などをしたことはその職権を濫用した違法なものである。

7  本件建物の近隣にほぼ同時期に建てられ、本件建物より建築基準法にいう建ぺい率違反の程度が大きい鉄筋コンクリート造の建物があるが、この建物については市から実施要綱による措置は何らとられていないのに、本件建物については前記の給水停止などがなされた。これは憲法一四条に反する不当な差別行為であり、西口らの控訴人に対する前記行為は違法たらざるをえない。

8  奥野、山岡は昭和四八年三、四月ごろ控訴人に対し本件建物についての建築基準法違反の程度は僅少であるのに、その是正を強く求め、控訴人において任意にその是正をしないときは行政上の代執行をすると脅迫し、また、控訴人を悪人呼ばわりして侮辱する不法行為をした。

9  西口、奥野、山岡はいずれも市の職員としてその職務を行なうについて以上の各不法行為を行なったものであり、市はその使用者として控訴人に対しその被った次の損害を賠償する義務がある。

(一)  敷地の減価など  一〇二万八〇〇〇円

本件建物の敷地の価格は通常の上水道ある土地に比較して三万三〇〇〇円減価している。控訴人は園木忠男に対し昭和四八年五月二〇日から同四九年一二月九日まで一九か月間にわたり本件建物には私設水道設備しかないことから得べかりし家賃月額四万五〇〇〇円を四万円に、得べかりし敷金二七〇万円を一八〇万円にそれぞれ減額してこれを賃貸したため、九九万五〇〇〇円の減収となり、これと右三万三〇〇〇円との合計一〇二万八〇〇〇円の損害を受けた。

(二)  既存水道設備の修理費など  四万円

控訴人は本件建物について市から給水装置工事申込の受理を拒絶されたので、昭和四八年六月やむをえず藤野工務店に暫定的に私設水道設備工事をさせたところ、同四九年一二月九日に市が右申込を受理したので、訴外会社に右既存の水道設備の点検修理をさせ、水道設備工事をさせたが、その費用として四万円を要した。

(三)  交通費       一二八〇円

控訴人は昭和四八年五月二〇日から同四九年一二月九日までの間に八回にわたり市水道局に出向いて善処を求める請願をしたが、これは市職員の違法行為がなければ不要のものであり、その交通費として合計一二八〇円を要した。

(四)  慰藉料       一〇〇万円

市職員による本件違法行為により控訴人は表現し難い程の精神的損害を受けたが、その慰藉料としては一〇〇万円が相当である。

10  よって、控訴人は市に対し本件不法行為に基づく損害賠償として前記損害額のうち二〇〇万円及びこれに対する不法行為の日以後の昭和四八年五月二〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三  被控訴人は、請求の原因に対し次のとおり答弁した。

請求の原因1は認め、同2、3中、本件建物が建築基準法にいう建ぺい率に違反する建物であり、控訴人がこの事実を認めていたこと、本件建物が昭和四八年五月二〇日に給水装置工事を除いて完成し、控訴人が引渡を受けたことは認め、その余は争う。

同4中、市建築部長が同四八年四月九日付依頼文書で給水制限するよう通知を行なったこと、市が実施要綱を制定していること、同四九年一二月九日控訴人の本件建物についての給水装置工事の申込を受理し、同五〇年一二月四日右工事が完成したことは認め、控訴人が同四八年五月一二日ごろ右申込をしたこと、その後も再三にわたって申込をしたことは否認し、その余は争う。

同5中、本件建物に同四九年一二月ごろ以降人が居住していることは認め、その余は争う。

同6ないし10は争う。

四  被控訴人は次のとおり主張した。

1  市は昭和四一年にその区域内の建築基準法所定の建築確認を受けていない多数の建築物の違反是正を目的として、市給水条例施行規程一〇条を現行のとおり改め、その実施要綱を原判決添付の別紙二記載のとおり定め、これに基づいて建築基準法に適合させるべく行政指導をし、違反建築物に対しては給水制限を行なってきたが、違反建築物でも人が居住するときは給水制限を差し控えてきた。

2  市職員は昭和四八年五月控訴人の代理人田上から給水装置工事の申込について問合せを受け、実施要綱に従い建築確認のない申込は留保しておくよう行政指導をなしたにすぎない。その後同四九年一二月九日に至るまで控訴人自身または田上から右申込を受けたこともない。

同四九年一二月に市において本件建物に人が居住していることが判明したので、未だ建ぺい率違反の是正がなされていなかったが、市水道局職員から田上に指示し、本件建物の給水装置工事の申込をさせ、これを受理したものである。

3  本件紛争はもともと控訴人の建築基準法違反の行為によって発生したものであり、控訴人の法違反の事実は再三にわたる市建築部の勧告によるも是正されていない。控訴人は自己の違法は措いて、市があえて権力的行動に出ることができない立場にあることにつけ込み、水道法一五条などを理由に虚構の事実を粉飾して本訴請求をしているもので、市こそが被害を受けているというべきである。

五  《証拠関係省略》

理由

一  市は水道法にいう水道事業者であり、控訴人は市内に原判決添付の別紙一物件目録記載の建物(増築部分を除く。)を所有している者であること、控訴人は右建物の増築部分である本件建物を昭和四八年五月二〇日に完成させたこと、控訴人は本件建物が建築基準法にいう建ぺい率に違反する建物であることを昭和四八年当時認めていたこと、市は違反建築物に対する給水制限について実施要綱を定めていること、市水道局長は建築部長から同年四月九日付文書で、本件建物につき控訴人に対し給水制限するよう依頼の通知を受けていたこと、同四九年一二月九日本件建物につき控訴人からした給水装置工事の申込が受理され、同五〇年一二月四日右工事が完了したことは当事者間に争いがない。

二  前記争いのない事実に《証拠省略》を総合すると、次のとおりの事実が認められる。

1  市は水道法七条所定の厚生大臣の認可を受け、市全域を給水区域として同法にいう水道事業を経営する者であり、昭和三五年四月一五日公布の豊中市水道事業給水条例(以下条例という。)及び同施行規程(以下規程という。)をもって給水についての料金及び給水装置の費用負担その他供給条件並びに給水の適正を保持するために必要な事項を定めている。条例の定めによると、市内居住者などが新たに市から給水を受けようとするときは、まず市に対し給水装置(配水管から分岐して設けられた給水管及び給水用具)新設工事の申込をしなければならない(一二条一項)。この申込によって市が工事の設計施行をするが、市水道事業管理者の許可を得たときは、あらかじめ市の審査に合格した設計に基づき申込者において施行することができる(一三条一項)。この場合の工事は市の給水工事公認業者に施行させなければならない(同条二項)。需用者はこのようにして完成した給水装置によって市の施設する配水管から給水を受けることができる。

2  市は、大阪市に隣接し、住宅都市として昭和三〇年代ごろから急激に発展したため、建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法令の規定に適合しない建築物が著増し、このため都市計画上の支障、あるいは消防車、清掃車の進入が困難になる等行政の多方面にわたって支障を生じ、その対策に苦慮していた。その後市議会は昭和四〇年一二月一八日全員一致の決議によって市に対し右のような不法建築規制のため給水を行なわない措置などを講ずべきである旨要望した。市はこれを受けて、同四一年三月四日に出された大阪府統一見解に従い、同年四月一日規程一〇条二項に「前項に規定するもののほか、管理者が必要と認めるときは、工事申込者に対して、当該工事の申込にかかる建築物の確認通知書の提示を求めることがある。」との定めを設けたうえ、原判決添付の別紙二記載のとおりの右規程の実施要綱を定めて、右規程の運用につき工事申込者の協力を求めたり申込者に働きかけたりする、すなわち行政指導をすることとなった。

3  控訴人は、昭和四七年当時原判決添付の別紙一物件目録記載の共同住宅(増築部分を除く。)を所有し、寺川千津子ほかの者に賃貸していたところ、右建物の増築を計画し、藤野工務店にその工事を請負わせた。同工務店は同四八年二月初ごろまでに基礎工事を完了し、同月一〇日ごろから本件建物の建築工事に着工し、同年五月二〇日給水装置工事を除きその余の工事を完成し、同日控訴人はその引渡を受けた。

控訴人は昭和四八年三月二八日市の建築主事(市は同四三年四月一日建築行政事務の移譲を受けている。)に対し本件建物につき建築基準法所定の建築物確認申請をなしたが、本件建物建築着工当初から建築基準法五三条所定の建ぺい率に適合しないことを十分知っており、また、申請時以前に市建築部職員奥野善雄から本件建物の建築中にその旨及び大阪府建築基準法施行条例(昭和四六年三月二日大阪府条例第四号)六条に違反する旨の各指摘を受け、その是正を求められていた。そして、同年四月六日には建築主事から書面で本件建物が建築基準法施行令二〇条の四第二項に抵触するおそれがある旨通知を受けたにかかわらず、建築資材の値上りなどを口実に将来の増改築時に建ぺい率違反などを是正すると称して、市職員の勧告に応じないまま本件建築を強行しこれを完成させた。

4  控訴人は、昭和四八年五月初ごろ本件建物の建築確認を受けることなく、田上に対しその給水装置新設工事の申込をすることを委任し、田上は同月中ごろ控訴人のために市水道局に対し右申込をしたところ、同局給水課長西口常夫はその受理を事実上拒絶し、建築基準法違反を是正し、建築確認を受けて申込をするよう勧告した(以下西口の措置という。)ので、田上は控訴人にその旨伝えた。

そのため、控訴人は、同年六月初ごろ藤野工務店に前記共同住宅の賃借人寺川千津子方の給水装置に接続して本件建物までの水道設備(給水装置)を設置させ、同月八日園木忠男に本件建物を賃貸し、同人は一〇日からこれに居住するなどして使用を始めた。控訴人は本件建物に右水道設備をなしたことは条例、規程に違反することを知っており、園木との賃貸借契約の際、右水道設備は私設のものであり、いずれ市の許可を受ける旨伝え、その了解を得た。

田上は、前記申込の受理を拒絶された後においても控訴人から申込をなす委任を受けていたが、その後は申込をせずに申込書を保管していたところ、前記西口の後任者である鶴岡勝給水課長から本件建物の給水装置新設工事の申込書を提出するよう指示され、同四九年一二月九日規程一〇条一項一号所定の分岐承諾書などを添付して申込をして受理され、これに基づき訴外会社が右工事を施行し、同五〇年一二月四日完成した。

5  昭和四八年四月当時市建築部においては、奥野の報告に基づき控訴人が建築中の本件建物が建築基準法六条一項、昭和四五年法律一〇九号による改正後の同法五三条、大阪府建築基準法施行条例六条の各規定に適合しない建築物であると判断し、その違反の是正を求めるべく、それまでの控訴人に対する改善勧告に併せて、同月九日付建築部長名の文書で水道局長に控訴人所有の本件建物につき給水制限をされたい旨依頼した。

以上の事実が認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

控訴人は昭和四八年五月以降においても再三市水道局に給水装置新設工事の申込をしたと主張し、原審における控訴人本人尋問の結果中にこれに沿う部分があるが、《証拠省略》に照らし措信しえず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

三  以上に認定した事実関係に基づいて判断するに、市が昭和四一年当時市内における建築基準法などの法令の規定に適合しない建築物の著増傾向に鑑み、法令違反行為を防止しあるいはこれを除去するには、建築基準法などの規定の活用によるだけでは行政上有効、適切でないとし、同四〇年一二月一八日の市議会の要望決議に答えて、同四一年四月一日前記規程一〇条二項の規定を設け、かつ前記実施要綱を定めて行政指導をすることとしたこと自体は、その目的、趣旨に照らし違法とすることはできない。要はその運用の適否にある。他方、控訴人のした前記給水装置新設工事の申込は水道法一五条所定の「給水契約の申込」に該当するものであって、市は「正当の理由」がないかぎりその申込を拒否することは許されないものというべきである。右法条にいう「正当の理由」とは、水道事業者がその事業経営上給水区域内からの需用者に対し給水しないことをやむをえないものとされる事由、例えば申込にかかる場所には事業計画上配水管が未設置であるとか、特殊な地形であるため給水が技術的に著しく困難であるなどの事由がある場合などをいうものと解すべきであり、本件にあってはやむをえない事由があるものと認められず、前記の西口の措置はその結果において水道法一五条の規定に違背するものとみられないではない。また、当初の申込の時(昭和四八年五月)、園木忠男が本件建物に入居した時(昭和四八年六月)から鶴岡が田上に申込を促し、給水装置新設工事のための具体的な手続が開始された時(昭和四九年一二月)まで約一年半の日時が経過していること前記認定のとおりである。

そこで控訴人の申込に対する西口の措置、すなわち給水契約申込に対する事実上の拒否が不法行為法上違法であるか否かについて検討するに、控訴人が本訴において自認している本件建物についての建築基準法に定める建ぺい率違反は決して軽微なものとして看過できることがらではないこと、控訴人はその違反の是正が可能であるにもかかわらず是正の意思が全くなかったこと、園木忠男らは入居時本件建物に設置されていた水道設備(給水装置)は市の許可を得ていないものであることを承知していたが、入居後水の供給を受けており、生命、健康に影響があったとは認められないこと、行政指導の方針である前記実施要綱の趣旨、目的、その他前記事情を総合しんしゃくすると、西口の措置はいまだもって行政指導の限界をこえたものということはできない。本件において、行政法規たる水道法一五条に違反するからといって、直ちに不法行為法上の違法ということはできない。

四  次に、控訴人は、本件建物の近隣に建築基準法の規定に適合しない建築物があるのに、市はこれに対し給水制限をせず、ことさら本件建物につき給水制限をしたことにつき、法の下の平等の原則に反し不当な差別行為となる違法があると主張するが、右建築物が建築基準法に違反するものであることを明らかにするに足りる証拠はなく、不当な差別行為があるものと判断するに足りる事実を認めうる証拠はない。控訴人の右主張も採用しえない。

五  また、控訴人は、奥野、山岡は控訴人を脅迫、侮辱する不法行為を行なったと主張するが、当審証人奥野善雄の証言によれば、同人は昭和四八年三月ごろまでにおいて建築中の本件建物が建築基準法六条、五三条及び前記大阪府条例六条の各規定に違反するとして、控訴人に対し数回にわたって本件建物のいわゆる「角切り」をするなどして違反を是正するよう勧告したことが認められるが、これは市の建築部指導課の職員として正当な職務行為で違法というに当らず、他に控訴人の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

六  そうすると、控訴人の本訴請求は、その余の判断をするまでもなく理由がないから、失当として棄却するべく、これと同旨の原判決は結局のところ正当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山内敏彦 裁判官 田坂友男 裁判官 大出晃之)

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